ハムスターを部屋で自由にさせている動画を見て、うちもできるのかなと思った方は多いはずです。ケージが狭そうに見えて、なんだか申し訳ない気持ちになることもありますよね。
私自身、扉のロックが甘くて一度脱走されたことがあります。見つけるまでの時間は、思い出しても落ち着かないものでした。
この記事では、室内と屋外で実際に何が起きるのか、長生きするという話は本当なのか、そして放したくなったときに代わりにできることまで、順番に整理していきます。
- 室内で放し飼いにしたときに起きること
- 公的な基準に書かれていることと、法律との関係
- 放し飼いで長生きするという話の本当のところ
- 放したくなったときに、ケージと部屋んぽで整える方法
ハムスターの放し飼いはできる?まず結論から

結論から書きます。ハムスターを部屋に出しっぱなしにする放し飼いは、おすすめしません。見ていない時間に起きる事故と、毎日の体調チェックが成り立たなくなること。この2つを防ぐ手立てがないからです。
ただ、これで終わりにされても納得できないですよね。放したくなる気持ちの裏には、たいてい「ケージが狭くてかわいそう」という後ろめたさがあります。そこに答えを出さないと、この記事の意味がありません。
この記事の結論は、放すか閉じ込めるかの二択ではありません。ケージを広く、床材を深くしたうえで、時間と範囲を区切った部屋んぽに置き換える。これが、いま出せるいちばん現実的な答えだと思っています。
この記事での「放し飼い」と「部屋んぽ」の線引き
先に言葉を整理させてください。この2つを混ぜたまま話すと、途中で話がかみ合わなくなります。
この記事では、ケージの扉を開けっぱなしにしたり、ケージを使わずに部屋の中をいつでも歩ける状態にしたりすることを「放し飼い」と呼びます。飼い主が見ていない時間ができるのが、放し飼いの本質です。
一方の部屋んぽは、時間と範囲を区切って、見ている間だけケージの外に出す散歩のこと。終わったらケージに戻します。同じ「外に出す」でも、中身はかなり違うものなんですね。
この2つを公的に線引きした定義は見つかりませんでした。あくまでこの記事の中での区別として読んでください。
あなたの状況別、どうすればいいかの早見表
どれに当てはまるかで、この先に読むべきところが変わります。まずは表で自分の位置を確認してください。
| あなたの状況 | どうするか | 理由の芯 |
|---|---|---|
| ケージが狭そうでかわいそう | 放すのではなく、広いケージに替えて床材を深く敷く | 狭いほど金網をかじる時間が長かったという研究がある |
| 運動不足が心配 | 体に合った大きさの回し車にして、時間を区切った部屋んぽを足す | 回し車があるとかじる行動が減ったという報告がある |
| SNSで見て憧れた | 常時の放し飼いは避けて、見ている間だけの部屋んぽに置き換える | 見ていない時間の事故を防ぐ手立てがない |
| 部屋んぽをやってみたい | 夕方から夜に、範囲を区切って、コードと隙間を先に処理してから | 獣医師も骨折の予防として「目を離さない」を挙げている |
| 庭や屋外で放したい | やらない | 気象・捕食・転落が重なる。原産地と日本の気候も違う |
| 飼えなくなったので自然に返したい | 返さない。里親探しや相談窓口へ | 飼育下の個体は、人の世話なしでは暮らせない |
| いま脱走されている | 窓とドアを閉める、排水口をふさぐ、ケージを開けて餌を置く | 逃げた場合に自分で速やかに捜索することは公的な基準に書かれている |
| 小さい子どもや高齢の家族がいる | 放し飼いは避ける | 元気でも菌を持っていることがあり、糞尿が部屋に広がる |
そもそも、なぜケージで飼うのが基本なのか

「放し飼いはだめ」と言われても、根拠が示されないと、なかなか納得できないものです。気になって公的な資料を読んでみたら、ケージで飼うことの土台になる記述がいくつも見つかりました。
公的な基準は、飼育の施設を設けることと逃がさないことを求めている
環境省が出している「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」という告示があります。ここには、動物の種類や生態、習性を考えた飼育のための施設を設けること、と書かれていました。
さらに逸走防止の項目があって、施設は逃げ出さない構造にすること、逃げてしまった場合は自分の責任で速やかに探して捕まえること、と定めています。
この基準でいう動物は、哺乳類・鳥類・爬虫類。ハムスターもふくまれます。つまりケージを用意して逃がさないようにするのは、飼い主に求められている前提なんですね。
犬や猫とは書かれ方が違う。「法律で禁止」ではありません
ここは正直に書きます。同じ基準の中で、犬にはさくで囲まれた自分の敷地や屋内などで飼う場合を除いて「放し飼いを行わないこと」と書かれています。猫については「屋内飼養に努めること」。名指しで方向が示されているわけです。
一方で、ハムスターのようなげっ歯類には、犬や猫のような個別の章がありません。だから「ハムスターの放し飼いは法律で禁止されている」と書くのは、正確ではないんです。
正確に言えば、共通の基準である「施設を設ける」「逃がさない」が当てはまり、犬猫では放し飼いを避ける方向が明示されている、というところ。ここは盛らずに書いておきます。
「放し飼いにせず」と書かれた公的な資料もあります
もう1つ、環境省の「人と動物の共通感染症に関するガイドライン」(平成19年3月)にも目を通しました。感染を防ぐ話の中に、放し飼いにせず、できる限り他の動物との接触を控えさせることが重要、という一文があります。
ただし、これは動物の種類を限定しない一般論として書かれたもの。ハムスターを名指ししたものではありません。そこは正直に添えておきます。
それでも、公的な資料が「放し飼い」という言葉を使って注意を促している。この事実は、判断の材料として知っておいて損はないと思います。
室内で放し飼いにすると、何が起きるのか

危ないと言われても、具体的に何がどう危ないのかが見えないと、判断のしようがありません。起きることを分けて見ていきます。
気づかずに踏む、扉に挟む
いちばん起きやすいのがこれです。エキゾチックアニマルを診ている動物病院の解説を読むと、ハムスターの骨折は事故によるものが多く、部屋に出しているときに知らずに踏んだ、扉に挟んだ、という例が挙げられていました。
ゴールデンハムスターで体長13cmほど、体重は100gから125gくらい。ジャンガリアンならもっと小さくなります。床にいると視界に入りません。
しかも家族が多い家ほど、全員が同じ注意を保ち続けるのは難しいものです。自分は気をつけていても、家族が急いで部屋に入ってくる場面まではコントロールできません。
高いところからの落下と骨折
同じ動物病院の症例では、1歳10か月のゴールデンハムスターが右の後ろ足を上げて歩き、レントゲンで大腿骨の骨折が見つかっています。金属のピンで固定する手術を受け、術後27日で骨がついたことを確認したそうです。
体が小さいぶん、犬や猫のようにプレートを当てて強く固定するのは難しく、選べる方法が限られる。そう書かれていました。予防として挙がっていたのは、その子に合ったケージを選ぶことと、部屋に出しているときは目を離さないことです。
ハムスターが高さの感覚をつかむのは苦手だという説明もよく見かけます。ただ、その理由づけの部分は元をたどれませんでした。落ちて骨折する事故が実際に起きている、という結果のほうが確かです。
足を浮かせて歩く、体重をかけられない、足がぶらぶらしている。こうした様子が出たら骨折の可能性があります。骨がつくかどうかは時間が関わるので、早めに動物病院で相談してください。
かじる相手が部屋じゅうにある(電気コード・家具)
ハムスターの前歯は一生伸び続けます。伸び続けるから、かじる。しつけでやめさせるという発想が通らないのは、これが体のつくりから来ているからです。
部屋に放せば、かじる相手は電気コード、巾木、壁紙、家具になります。コードをかじって感電し、皮膚がただれたという記載も見かけました。ただ、これは飼い主の投稿が元で、症例の記録としては弱いものです。
だから「感電で死にます」とは書きません。書けるのは、かじる習性がある以上、コードは物理的に届かない場所へ動かすしかない、というところまでですね。
綿や布を飲み込んでしまう
綿やティッシュ、布は繊維が絡み合って切れにくく、口から取り出しにくい。飲み込むと溶けずに腸で詰まり、命に関わることがあると指摘されています。発生率まで確かめられる資料は見つかりませんでした。
放し飼いだと、飼い主が把握していない繊維に触れる機会が増えます。カーペット、脱ぎっぱなしの服、ぬいぐるみの綿。ケージの中なら選べるものが、部屋では管理の外に出てしまいます。
隙間に入り込む、そのまま行方が分からなくなる
家具の下や裏、壁とのわずかな隙間。ハムスターは頭が入れば通れます。入ったきり出てこないと、こちらからは手が届きません。
冷蔵庫や洗濯機の裏に入られると、動かすまで安否の確認すらできない状態になります。ここから先は脱走の話なので、記事の後半でまとめてお伝えします。
食べた量も体調の変化も分からなくなる
事故ほど目立ちませんが、私はこれがいちばん重い問題だと思っています。ハムスターの不調は、食べた量、便の様子、動きの変化から気づくもの。放し飼いにすると、その3つがまとめてあいまいになります。
餌を部屋のあちこちに持っていかれたら、何をどれだけ食べたのか分かりません。便も見つけられない。弱っているサインが出ていても、気づくのが遅れます。
ちなみに環境省の資料では、必要な世話をせずに放置することも虐待にふくまれる、とされています。放し飼いがそのまま虐待だという話ではありません。ただ、体調が見えない状態が続くのは、やはりよくないですよね。
糞尿が部屋に広がる。人の健康との関わり
これはあまり語られない視点です。さきほどのガイドラインを読むと、ハムスターやリス、ウサギなどが関わる感染症として、エルシニア症・サルモネラ症・皮膚糸状菌症の3つが挙げられていました。
気をつけたいのは、動物側は症状が出ないことが多いという点です。うちの子は元気だから大丈夫、という考え方が成り立ちません。実際、サルモネラ菌を持つ動物としてハムスターも名前が挙がっています。
同じ資料には、人側の予防として、触れたあとはすぐ手を洗う、一緒に寝ない、寝床に入れない、といったことが書かれています。部屋を自由に歩ける状態は、この3つを同時に崩してしまう飼い方ですよね。
とくに小さいお子さんや高齢のご家族、体調を崩している方が同居している家庭では、放し飼いは避けたほうが無難だと思います。脅すつもりはありませんが、条件として知っておいてほしいところです。
「放し飼いにすると長生きする」は本当か
これ、気になりますよね。放し飼いにしたハムスターが3年以上生きたという話を見かけて、うちもそうなるならと思った方は多いはずです。私も最初に見たときは、本当かなと引っかかりました。
調べてみると、この話の出どころは個人の動画でした。一次の情報までたどれません。そして、比較に使われている「普通のハムスターの寿命は1〜2年」という前提のほうに、そもそもずれがあります。
ミシガン大学が公開している生き物の解説によると、ゴールデンハムスターの寿命は、野生でおよそ1.5年から2年、飼育下ではおよそ2年から2.5年が典型。記録上は4年という数字も載っていました。
もちろん、これはあくまで目安です。個体差も飼い方の差もあります。それでも、3年生きること自体は放し飼いでなくても起こる範囲だと分かります。この数字だけでは、放し飼いだから長生きしたという理屈は立ちません。
ちなみに、ここで挙げたのはゴールデンハムスターの数字です。私が飼っているジャンガリアンは目安が変わるので、ジャンガリアンハムスターの寿命の目安のほうを見てください。
長生きしてほしいなら、放すことより、温度の管理と餌、そして毎日の体調チェックのほうが確かな打ち手です。
庭や屋外での放し飼いと、「自然に返す」がだめな理由
ここは少し強めに書きます。室内と屋外では、リスクの質そのものが変わるからです。
屋外は、遺棄の判断で見られる条件がそのまま揃ってしまう
飼っているハムスターは、動物愛護管理法でいう愛護動物にあたります。人が飼っている哺乳類だからです。遺棄した場合は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金と、環境省の「虐待や遺棄の禁止」のページに書かれていました(2026年7月時点)。
遺棄の考え方については、環境省が出した通知があります。愛護動物を移したり置き去りにしたりして場所的に離し、その生命や身体を危険にさらす行為、という枠組みでした。
危険にさらされる場所の例として挙がっているのが、餌や水を得るのが難しい、厳しい気象にさらされる、事故や転落に遭う、野生の生き物に捕食される。庭に放つ行為は、この条件にそのまま当てはまってしまいます。
ただし「庭で放し飼いにしたら犯罪です」とは言い切れません。通知は場所的に離すことと危険にさらすことを要件にしていて、目の前で見ている短時間の行動をただちに遺棄と判断するものではないからです。飼えなくなって自然に放す行為は、遺棄にあたる可能性が高いと考えてください。
気候の面でも無理があります。ゴールデンハムスターの野生の分布はシリア北部やトルコ東部の一部。年間の降水量が約336mmという乾いた土地です。
日本の梅雨や真夏の湿気は、その環境とかけ離れています。冬も同じで、寒さで動きが鈍くなれば、猫やカラスに見つかるのは時間の問題でしょう。
飼えなくなったときに取れる現実的な選択肢
事情があって飼い続けられなくなること自体は、責められる話ではないと思います。引っ越し、アレルギー、家族の入院。どれも実際に起きることです。問題は、その先の選び方のほうですね。
まずは里親を探す。譲る相手の飼育環境を確認してから渡す。地域の動物愛護センターや保健所に相談してみる。購入したペットショップが相談に乗ってくれる場合もあります。
どれも手間はかかります。それでも、自然に返すという選択だけは、その子が生き延びられない道です。飼育下で生まれ育った個体は、人の世話なしでは暮らせません。
野生のハムスターはどんなふうに暮らしているのか
遠回りに見えるかもしれませんが、ここが「じゃあどうすればいいのか」への橋渡しになります。
ゴールデンハムスターは単独で暮らし、縄張り意識がとても強い生き物だとされています。交尾のとき以外は同じ仲間に対しても攻撃的。日中は巣穴で過ごし、夕暮れに目を覚まします。
おもしろかったのが巣穴の話です。シリア北部で野生の巣穴を30か所調べた研究では、深さは36cmから106cm、平均で65cmほどありました。縦に掘った入口から、寝る部屋と食べ物をためる部屋につながっていたそうです。
一晩で餌場と巣穴を往復して十数キロ動くという記述も見かけました。ただ、この数字は元の資料までたどれませんでした。数字を強く受け取るより、それだけよく動く生き物なんだ、という方向で読んでください。
ここから見えてくるのは、ハムスターが本来やりたいのは「広い部屋を歩き回ること」ではなく「潜って掘って、自分の巣を作ること」だという点です。
放したくなったときの答えは、部屋ではなく「広く・深く」

この章がこの記事の本題です。放したくなる気持ちは、たいてい「ケージが狭そう」から来ています。だとしたら、向かう先は部屋ではありません。
興味深いのは、環境省の通知の中に「狭いケージに閉じ込めっぱなしである」という記述が、飼育改善の指導が必要な例として載っていること。ケージで飼うようにとも、狭く閉じ込めるなとも書かれているわけです。
だから正解は二択の外にあります。ケージそのものを広く、そして深くする。これが、放したい気持ちに対する現実的な答えだと思っています。
金網をかじる、よじ登るのは何のサインか
ケージの金網をカリカリかじる。天井までよじ登る。この様子を見て「窮屈なのかな」と感じた方は多いはずです。何をしているのか分からないと、不安になりますよね。
調べてみると、この金網かじりは常同行動として研究されている領域でした。常同行動というのは、同じ動きを繰り返す行動のこと。飼育環境との関係が調べられています。
メスのゴールデンハムスター60頭を、広さの違う4種類のケージで1頭ずつ飼って比べた研究があります。床材の深さや回し車の条件はそろえたうえで、行動を記録したものです。
ケージの広さで変わったこと
結果は、狭いケージのハムスターほど金網をかじる時間が長く、回数も多かったと報告されています。回し車を回す量のほうには、はっきりした差が出ませんでした。
ここは正直に添えておきます。いちばん広いケージでも、金網かじりそのものは観察されました。つまり広くすれば直るという話ではなく、減る傾向が示された、というところまでです。
それでも、狭さが行動に出ているなら、先に変えるのはケージのほうですよね。部屋に出したところで、ケージが狭いという条件は何も変わっていません。
どのくらいの広さが必要かは品種で変わるので、品種別の必要サイズとケージの選び方のほうも見てみてください。
床材は「潜れる深さ」があるかどうか
もう1つ、床材の深さを比べた研究も見つけました。オスのゴールデンハムスター45頭を、床材の深さ80cm・40cm・10cmの3つのグループに分けて、行動を見たものです。
10cmのグループは、ほかより金網をかじる行動がはっきり多かった。研究では、巣穴を作れる深さの床材はペットの飼い主にすすめられる、と結論しています。掘れる深さの目安として40cmほどが挙がっていました。
とはいえ、市販のケージに40cmの床材を敷くのは、ほとんどの場合むずかしいと思います。現実的なのは2つ。今より深くすること、そして深さを取れる形のケージを選ぶことです。
深さを取るとなると、床材の量も増えます。私が使っているのは紙タイプの床材で、いまのところこれ1種類で困っていません。深く敷くなら、まとめて買えるものを選ぶと補充が楽です。
床が浅い金網ケージだと、そもそも深く敷いた床材が外にこぼれます。深さを取りたいなら、側面に高さのあるケージを選ぶところから考えたほうが早いですね。
深さの決め方そのものは、ケージから出たがるときに見直したい床材の深さのほうで詳しくまとめました。
回し車は体に合った大きさを選ぶ
運動不足が心配で放したくなる方には、回し車の見直しをすすめます。回し車があると、かじる行動が減ったという報告があるからです。
サイズについては、日本でよく見かける推奨値の元をたどれませんでした。だから数字を出すより、走ったときに背中が反らない大きさ、という見方で選ぶほうが確かです。
参考までに、さきほどの2つの研究で使われていたのは直径30cmの回し車でした。市販のものはこれより小さいことが多いので、迷ったら大きめを選んで損はありません。
部屋んぽの安全なやり方

ケージを整えたうえで、それでも外を歩かせたいなら部屋んぽです。放し飼いとの違いは、時間と範囲を区切ること、そして見ていること。この2つに尽きます。
出す前に片づけておくもの
出してから片づけるのでは間に合いません。先に部屋を作ってから出す。順番はこれで固定です。
- 電気コードはカバーをかけるか、届かない高さへ上げる
- 家具の下と裏、壁とのすき間をふさぐ
- ドアと窓を閉める。ほかのペットは別の部屋へ移す
- 観葉植物、小さい小物、床の食べこぼしを片づける
- サークルなどで歩ける範囲を区切る
- カーペットや毛布など、かじれる繊維を外しておく
サークルを使うときは、高さを過信しないほうがいいです。ハムスターは思っている以上に登りますし、跳びます。低い囲いだと、目を離したすきに越えられます。
出している間に守ること
時間帯は夕方から夜がいいでしょう。夜行性なので、昼間に無理に起こして出すのは避けます。寝ているところを起こされるのは、こちらが思うよりストレスになります。
そして目を離さないこと。これは獣医師も骨折の予防として挙げていた、数少ない具体策です。スマホを見ながらの見守りは、見ていないのとほぼ同じだと考えてください。
何分が適切かという数字は、根拠のある形では見つかりませんでした。短く始めて、その子の様子を見ながら決めるのが現実的です。自分から巣に帰るとは限らないので、戻すのも人の役目になります。
やめどきと、動物病院に相談する目安
種類によって放し飼いへの向き不向きがあるという話も見かけますが、裏づけのある基準は確認できませんでした。それより個体差のほうが大きいと思います。怖がりの子、高齢の子、体調が悪い子には、外に出すこと自体が負担になります。
部屋んぽの途中で隠れて出てこない、いつもより荒い動きをする、明らかに怖がっている。こういうときは、その日は早めに切り上げます。
足を浮かせて歩く/食欲がない、便が出ない/固いものを食べない、口元の様子がおかしい、鼻から出血している/電気コードをかじった形跡がある。どれかに当てはまるなら、早めに動物病院で相談してください。
ハムスターを診られる病院は、犬や猫より少ないのが実情です。元気なうちにエキゾチックアニマル対応の動物病院を探しておくと、いざというときに慌てずにすみます。
脱走されたときに、まずやること
実は私も一度やらかしています。餌をあげたあとに扉を閉めたつもりで、ロックが甘かったんですね。朝起きたら扉が開いていて、姿がありませんでした。
ケージを置いていたのは2階。階段を降りられていたら最悪だと思いながら、名前を呼びつつ探しました。見つけたのは同じ階の物置です。
衣装ケースの中に置いていた、高さが60cm以上あるクリアケース。近づくとガサガサ音がして、ダウンコートをかき分けたらひょっこり顔を出しました。あのときは本当に焦りましたね。
この件で伝えたいことは2つあります。扉のロックは思っている以上に甘くなること。そして成長したハムスターは、想像よりずっと力もジャンプ力もあることです。
逃げてしまった場合に、自分の責任で速やかに探して捕まえること。これはさきほどの環境省の基準にも書かれています。手順そのものは経験として語られているものが中心ですが、共通しているのは次の流れです。
- ドアと窓を全部閉める。屋外に出られると、見つけるのは一気に難しくなる
- 電気コードなど、かじると危ないものを片づける
- 風呂・トイレ・キッチンの排水口をふさぐ
- ケージの入口を開けて、中に餌を入れておく
- 部屋のあちこちに餌と水を置き、減り方を毎日確認する
- 大きな音を立てない。怖がって出てこなくなる
探す場所は、家具の裏、押し入れ、衣類の下。暗くて狭くて潜れるところから当たります。夜行性なので、静かにしていれば夜のほうが動く音に気づけるはずです。
見つけても、いきなり手を伸ばすと奥へ逃げます。餌を置いて出てくるのを待つほうが、結果的に早く捕まえられました。
よくある質問
- ハムスターの放し飼いは法律違反になりますか?
-
ハムスターには犬や猫のような個別の決まりがなく、室内の放し飼いを名指しで禁じた条文はありません。ただし環境省の基準は、飼育のための施設を設けることと逃がさないことを求めています。屋外に放つ行為は、遺棄と判断される可能性があります。
- 夜のあいだだけ放し飼いにするのもだめですか?
-
見ていない時間ができる点は同じなので、私はすすめません。夜は活動が活発になるぶん、かじる、落ちる、すき間に入るといった事故も起きます。外に出すなら、起きている時間に範囲を区切る部屋んぽへ置き換えてください。
- 放し飼いにしても、自分でケージに帰りますか?
-
帰るとは限りません。巣に戻る子もいますが、気に入った暗い場所をそのまま新しい寝床にしてしまうこともあります。戻らなければ探すことになるので、人が見ている時間だけ出して人が戻す、という形が現実的です。
- 部屋んぽは何分くらいが適切ですか?
-
根拠のある形での目安の分数は見つかりませんでした。短い時間から始めて、その子の様子を見ながら決めるのが現実的です。隠れて出てこない、動きが荒いといった様子が出たら、その日は早めに切り上げてください。
- ケージが狭そうです。まず何を変えればいいですか?
-
床材の深さから見直すのがおすすめです。床材が浅いほど金網をかじる行動が多かったという研究があります。そのうえで、床の深さを取れる形のケージへの買い替えと、体に合った大きさの回し車を検討してみてください。
まとめ:ハムスターの放し飼いは、広いケージと部屋んぽに置き換える
長くなったので、ここまでの要点を並べておきます。
- 常時の放し飼いはすすめられない。見ていない時間の事故と、体調・衛生の管理を守る手立てがない
- 公的な基準は飼育施設と逸走防止を求めている。ただし「ハムスターの放し飼いは法律で禁止」ではない
- 「放し飼いで長生き」は、比較に使われている寿命の前提そのものがずれている
- 庭や屋外に放つ行為は、遺棄の判断で見られる条件にそのまま当てはまる
- 放したくなったときの答えは、ケージを広く、床材を深くすること
- 外を歩かせるなら、時間と範囲を区切って目を離さない部屋んぽに置き換える
狭いケージほど金網をかじる時間が長かった、という研究がありました。ケージが狭そうに見えるという飼い主の感覚は、たぶん間違っていません。
ただ、そこから「部屋に放す」へ進むと、事故も、体調が見えなくなる問題も、まとめて抱え込むことになります。同じ「かわいそう」に応えるなら、向かう先はケージのほうです。
迎えたばかりなら、まず床材を今より深くしてみる。ケージの買い替えを考えている段階なら、床の深さを取れる形を優先する。すでに広いケージを使っているなら、回し車の大きさを見直す。順番はこれで十分です。
まずは今夜、ケージの床材の深さと回し車の大きさを見てみてください。放すかどうかを考えるのは、そのあとでも遅くありません。
体調で気になるところがあれば、早めに動物病院(できればエキゾチックアニマル対応)にご相談ください。適した環境は、その子の月齢や体格、住んでいる部屋の条件でも変わります。
参考文献
- 環境省「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」(平成14年環境省告示第37号、最終改正 令和4年環境省告示第54号)
- 環境省「人と動物の共通感染症に関するガイドライン」(平成19年3月)
- 環境省「虐待や遺棄の禁止」(動物の愛護及び管理に関する法律の解説ページ)
- 環境省自然環境局総務課長通知「愛護動物の遺棄の考え方について」(環自総発第1412121号、平成26年12月12日)
- 環境省自然環境局総務課長通知「飼育改善指導が必要な例について」(環自総発第100205002号、平成22年2月5日)
- Fischer, K., Gebhardt-Henrich, S.G. & Steiger, A.(2007)Behaviour of golden hamsters (Mesocricetus auratus) kept in four different cage sizes, Animal Welfare 16(1)
- Hauzenberger, A.R., Gebhardt-Henrich, S.G. & Steiger, A.(2006)The influence of bedding depth on behaviour in golden hamsters (Mesocricetus auratus), Applied Animal Behaviour Science 100: 280-294
- Gebhardt-Henrich, S.G., Vonlanthen, E.M. & Steiger, A.(2005)How does the running wheel affect the behaviour and reproduction of golden hamsters kept as pets?, Applied Animal Behaviour Science 95: 199-203
- Gattermann, R., Fritzsche, P., Neumann, K., Al-Hussein, I., Kayser, A., Abiad, M. & Yakti, R.(2001)Notes on the current distribution and the ecology of wild golden hamsters (Mesocricetus auratus), Journal of Zoology 254: 359-365
- Animal Diversity Web「Mesocricetus auratus(golden hamster)」(ミシガン大学動物学博物館、2006年最終更新)
- ちゅら動物病院「後ろ足を浮かせて歩いている…。ハムスターの骨折(整復手術)」(文責・監修 清野伸隆 獣医師)
- ちゅら動物病院「ハムスターの切歯過長」
